第462回 “音楽会”がやってきた!

その日は、小雪の舞っていた前回とはうって変わって、春の到来を思わせるような穏やかな朝に始まりました。

小さな生徒さんの足台、皆さんにお渡しする記念品や、プログラム、その他の備品など、忘れ物のないよう持ち物をしっかり確認。いそいそと身支度をして、会場のセッティングとピアノの調律の打ち合わせのため、現地に足を運びます。

生徒さんの発表会…。わたしはそれをあえて発表会と呼ばずに、音楽会、にしています。発表会、では、何を発表するのかわからないし、ピアノ発表会、というのも、メーカーさんによる新作ピアノの発表の会に聞こえなくもありません。発表会というのは、なぜか私には、とてもお仕事的なイメージが先行してしまう言葉のようで、どうしても夢のある響きに聞こえないのです。

そこで、ずっと前から…ピアノを教え始め、生徒さんの発表会を初めて行なった時から、生徒さんの発表会は、“音楽会”。音楽会ならどこからどうみても(きいても?)、何やらステキな音楽がいっぱい聞こえてきそうで、なんとも楽しそうではありませんか?小学生の頃、たまにクラス単位で行なわれる“お楽しみ会”というのがありました。各自が好きなことを披露したり、特別にちょっとしたお菓子が食べられる時間だったので、私にとっては、まさに大きな“お楽しみ”な時間でした。“音楽会”には、どことなくその、お楽しみ会に通じる響きがある気がするのです。

打ち合わせ終了後、そんなことをふと思い返しながらも急ぎ足で、一旦家に戻ります。調律の間、その日に演奏する、仙台から来る生徒さんのレッスンが入っているのです。前回のレッスンの時よりも集中力がましていて、とても良い感じに仕上がっていました。よしよし!

彼と一緒に、もう一度会場へ。すでに調律は終わっていて、すぐにリハーサルに入ります。まるで時間を割り振ったように生徒さんが次々に来てくれたおかげで、順調なペースで進みました。一人ずつ、お辞儀からをゲネプロ(通し稽古)。慣れないピアノや会場の響きに戸惑いながらも、懸命に最終調整を行なっている姿を、自分の本番のように気を引き締めて、見守ります。

予定通りの時間にきっちりリハーサル終了。今回は、ナレーションや生徒さんの送り出しなど、快くお手伝いを申し出てくださった方々の助けがあったおかげで、随分気持ちにも余裕がありました。開演10分前には、すでに会場に入りきらないほどのお客様が、今や遅しと開演をお待ち下さっています。去年は「全然キンチョウしない!」と言っていた小さな生徒さんも、今回は舞台裏で「ちょっとキンチョウしてきた…」といいながら出番待ち。成長したんだね。美奈子先生もドキドキです…。

さて、始まってしまうと、時間のたつのは速いものです。それが楽しい時間であれば、さらに倍速です。受験勉強の真っ只中なのに、一度もレッスンを休まずにこの日を迎えた生徒さんたち、たまにモメながら(?)も、懸命に練習を重ねて、姉妹や親子…家族ならではの連弾を聞かせてくれた皆さん、大人になってからピアノを始め、初めてのステージを堂々とこなしてくださった方。出演されたお一人お一人が、それぞれに素晴らしいパフォーマンスを披露してくださって、それはそれはステキな音楽会になりました。

感激したのは、皆さんの演奏だけではありません。お客様がまた、素晴らしかったのです。演奏中は真剣に耳を傾けて、惜しみなく温かい拍手をくださり、終演後には、ご父兄の方が写真撮影のための椅子の移動や会場の片付けを、てきぱきと指示してくださいました。皆さんがそれによくご協力くださって、速やかに会場を撤収することができました。前回も、何人かの方から「お客様の雰囲気もとてもよかったです」と、おっしゃっていただいたのですが、今回もそれを強く感じました。良い演奏のためには、ギャラリーの雰囲気もとても重要なのです。

生徒さんやご家族の方から、労いのお言葉やプレゼントを頂いて、もうこの日は幸せでお腹いっぱい!だったのですが、実はその後にはまた、大きな楽しみが待っていました。「打ち上げ」です!!

ご出演下さった大人の生徒さんやそのご家族との、待望のお食事会…。会場は、『大人のための音楽塾』のために場所を提供してくださっているイタリアンレストラン“チャパトゥ”さんです。美味しいお料理やワインはもちろんのこと、皆さんとのおしゃべりが何よりも楽しくて、夢のようなひとときでした。思えば、四十路のひとり者女性で、“自営業”。お世辞にも安定しているとはいえない状態なのに、毎日楽しく、陽気に過ごせているのは、周囲の皆さんに恵まれているおかげなのだ、と、改めて実感したのでした(あの宇野千代さんもおっしゃっていましたよね。「陽気は美徳。陰気は悪徳。陽気が私の美の秘訣なの」って!)。

その後、当日のお客さまが何人も「生徒さんの、『音楽が、ピアノが、大好き!』という気持ちが伝わってきて、とてもよい会でした」と、感想をお寄せくださって、今もしみじみと喜びをかみしめています。

今月21日には、地域のイベントでコンサートに出演することになっています。どんな一日になるか、とても楽しみです。

2010年02月05日

« 第461回 吹雪の弘前にて | 目次 | 第463回 ちょっとビターな想い出 »

Home