第436回 てくてく歩きのドイツ日記 ⑧ ~ドレスデン其の二~

5月25日。昨日チェックした激安スーパーには焼きたてパン屋さんも併設されていたので、朝食を調達しに行く。スーパーでトマト、ヨーグルト、イチゴとシェーブルのチーズを、パン屋さんでプレッツェルとルバーブのクーヘンを購入。イチゴは500グラムで1ユーロ。ヨーロッパの旬のくだものは、甘みはさることながら酸と香りがしっかりしていて本当に美味しい…。

エルベ川のクルーズに参加する。この水蒸気船は、世界で初めての定期航路運行船なのだそうだ。「シュボ~~~ッ!」時おり、男の子が飛び上がって喜びそうな爆音とかなりの量の水しぶきを上げて、うんしょうんしょと水蒸気駆動のモーター(?)をまわし、ゆったりとすべるように進む。風が気持ち良いことこの上ない。船はレストランにもなっていて、お土産グッズもいろいろ販売していたりと、なかなか商売熱心だ。ビールを飲もうかと思ったが、このあとに行くドレスデンで最も有名な地ビール“ラーデベルガー”の飲める老舗にお楽しみをとっておくことに。

クルーズは、確かに素敵だったけど、どうも観光地的においが強くて落ち着かなった。ところどころでスピーカーから、案内のアナウンスが入ったのも残念だった(松島の遊覧船を思い出してしまって…)。船のモーターや、風の音だけ聞いていられたらよかったのだけど。

と、いいつつ、やはり観光客でにぎわっている老舗“ラーデベルガー”へ。看板のラーデベルガーピルスナーと、ザクセン料理ザウアーブラーテンを注文する。ザウアーブラーテンは、ワインビネガー漬けにした牛のロース肉の煮込み。この土地の代表的な郷土料理である。お皿には美しい紫きゃべつのザウアークラウトと、もちもちしたじゃがいものお団子“クネーデル”も添えられて、みるからに美味しそう!…食べてみたら想像以上に美味しくて、思わずのけ反ってしまった。この国の人は、お肉の酸の利かせ方が本当に上手だ。クネーデルは、バターでカリカリにローストしたパン粉のようなものがトッピングされていて、甘みや香ばしさと食感も楽しめ、コクがあるけどしつこくない赤ワイン風味のソースとの相性も、申し分なかった。

さらなる美味しいものをもとめ、市内をうろつく。“世界一美しい乳製品屋”といわれているお店は、あまりに高級な雰囲気だったし、持って帰れるものに特に心惹かれるものがなかったので、お買い物しないでお店をそそくさと出て、ドイツを代表するクリスマス菓子、シュトレン発祥の老舗クロイツカムへむかう。シュトレンといえば、昨年12月に地元のとある場所で『バッハの教会音楽』というトークイベントをしたときに、お客様にドイツのクリスマスの味を…、と思って、初めて手作りしたことを思い出す。ドイツではクリスマスの4週間ほど前から、シュトレンを毎日少しずつスライスして食べながらクリスマスを待ちわびる…という習慣があるほど、大切な伝統菓子なのだ。是非ここは、ホンモノを手に入れなくては。お店の人にたずねる。「すみません、シュトレンは、どのくらい日持ちしますか?」「9月まで大丈夫ですよ」おお!もともと日持ちのするお菓子ではあるけど、そこまでもつとは!実家へのお土産に、小さめのものを買う。

ドレスデン名菓は、シュトレンだけではない。“アイアーシッケ”という、あまり美味しそうじゃない響きのケーキがある。アイアーは卵、シッケは縞模様。卵をたっぷり使ったふわっふわのスポンジ生地に、クリームチーズフィリングが重なっていて、断面がきれいな黄色の三層ストライプ(?)になっている、見ているだけでも幸せになってしまうようなケーキ…。それを食すべく、カフェに入る。身じろぎしそうな大きさだけど、これがまた絶妙に軽い口当たりと味わいで、ぱくぱく食べられる。一緒に頼んだドリップコーヒーは、ヨーロッパでは珍しく深入りで、コクと苦味もしっかりとしていて、アイアーシッケととてもよいマッチングだった。

旧市街地からホテルまでは、軽く4~5キロの距離があるのだが、やはり乗り物に乗るのがもったいなくて、やはり歩いて帰る。途中、小さな噴水のでる広場があって、子供たちが裸で遊んでいた。「あら、ここにもドレスデンの天使ちゃんが…!」昨日、ドレスデン国立美術館でみたラファエロの“システィナのマドンナ”の中の、あの有名なちょっとむくれた表情の二人の天使や、ツヴィンガー宮殿のテラスに数え切れないほどあった天使像を思い出し、つい、カメラのシャッターを押してしまった。

明日はこの町、そしてこの国と、お別れだ。13時過ぎの新幹線で、一路フランクフルトの空港駅を目指す予定になっている。最後の夜はフランスの旅のとき同様、部屋でひとりお別れ会をすることにした。例のスーパーで、その祝杯(?)のためのお酒を選ぶ。今まであまり気をつけていなかったのだが、改めてみてみると驚くほどお酒が安い。いろいろ迷ったあげく、地元のワインもいいのだけどまだ泡を飲んでいなかったことに気づいて、スパークリングワインを一本買って帰る。全部飲みきれないかもしれないけど、1,3ユーロ(200円弱)だもの、よしとしよう。

結局、少しだけ飲み残して、この日は早めに就寝した。

(てくてく歩きのドイツ日記 ⑨ 最終回 に続く)

2009年07月17日

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