第410回  ちょこっと、ひとこと

2009年が明けました。仙台の実家でゆっくりのんびり年末年始を過ごすことができたおかげで、しっかりエネルギーチャージできました!“今年も、たくさん楽しいことがありますように”…と、いうよりも、“今年も色々なことをたくさん楽しめますように”…というのが、年頭の願いです。

おせち作りを手伝ったり、両親と初詣にでかけたり。久しぶりに仙台の初売りも体験できたし、高校の非常勤講師時代の教え子たちと一緒にゆっくりお酒をいただく機会もあって、今年の滑り出しは順調です。そうそう、10数年ぶりに、仙台初売り名物の福袋も買ってみました。フードにブルーフォックスのファーがついている、温かくて軽いキルトのジャケット、黒地に美しいブルーのステッチが施してある羊皮の手袋、イタリアンヤーンのカーディガンに、兎とウールが半々のイタリア製の帽子、そしてシルクのスカーフ・・・値段の5倍以上の中身に、大満足でした。

さて、今年もたくさんの方から、年賀状を頂きました。可愛らしいイラスト入りのプリントや写真の入ったもの、美しい木版画…送って下さった方の思いが伝わってくる年賀状を手にとり、一枚一枚ゆっくり眺めるのはなんとも楽しいもので、お正月のもっとも贅沢なひとときになっています。

「印刷だけの年賀状は、ちょっと味気ないものよね。ほんのひと言、書き添えてあるだけで、印象が全然違うのに…」と語る母は、かれこれ20年以上毎年、一枚一枚を自作の版画で手刷りしています。それでなくても何かと気ぜわしい年末のこと、その労力はかなりのものです。…と、いいつつ、今年はちゃっかり母に自分の年賀状の印刷もお願いしてしまったのですから、私の依存度こそ、かなりのものです。ちょっと問題ですよね(ママ、ごめんなさい!)。

版画を彫ったり刷ったりすることはできませんが、せめて、メッセージは一枚ずつ、書くようにしています。というより、メッセージを送りたくて年賀状を書いている、という方が適切なのです。元来、おしゃべりは大好きな性分。この方には何を書こうかしら、と悩むことは、ほとんどありません。むしろ、たくさんある書きたいことを、ある程度に絞らなければならないの、ということに、頭を悩ませてしまいます。

類は友を呼ぶのでしょうか。頂いた年賀状のほとんどに、やはり手書きのメッセージが添えられています。なかでも嬉しいのは、生徒さんからのメッセージ。「いつも楽しいレッスンを、ありがとうございます」「お休みの間も、お稽古頑張っています」「音楽に触れる幸せを感じる、この頃です」中には「みなこせんせい、だ~いすき!」なんていう、ちいさな生徒さんからの極上のメッセージもあって、書いて下さった一人ひとりのお顔を思い浮かべながら、じ~んと幸せをかみしめます。年賀状は年々減少傾向だ、と言われますが、やはりこれがなくなってしまったら、お正月はとても淋しいものになってしまうことでしょう。少なくとも、私にとっては…。

メッセージというと、ふと思い出すことがあります。母が外出する時に台所のテーブルの上においていったメモです。学校から帰ったときに母がいない、ということはかなりまれだったのですが、それでも年に何回かはそんな状況になるときがありました。そのような折、母は必ず置き手紙を残しておいてくれました。「美奈ちゃん、おかえりなさい。テーブルの上のおやつをどうぞ。ママは○時ごろもどります。」業務連絡のような(?)、なんの変哲もないものですが、それでも広告の裏に書かれた母の字を見て、子供の頃の私はどんなにホッとしたことでしょう。

今でも、実家では誰かの不在中に何かが起こると、担当した人間が必ずメモを置いていきます(気恥ずかしいのですが、実は、退職するまでなかなか普段は家に居ることがなかった父が、数年前に初めて私に置き手紙を残してくれた時は、あまりにレアで新鮮だったので、何年か捨てずに取っておいたのでした。父にはナイショの話なのですが)。

生徒さんのお母様にも、月謝袋にひと言、メッセージを添えてくださる方がいらっしゃいます。「いつも丁寧なご指導、ありがとうございます。息子が、『今度の発表会で、すごくカッコいい曲弾くんだよ!』と、喜んでおります。素敵に弾けるようになるといいのですが…」「今年も、たくさんの素晴らしい曲との出会いがありますように…ご指導、よろしくお願いいたします」手書きのメモには、メールや印刷の文字には現れにくい、お人柄や愛情のようなものが感じられて、ああ、すてきだなぁ…と、メモを手にしばしうっとりしてしまいます。

手書き、手縫い、手編み…手作り、手仕事って、つくづくいいものです。考えてみたら、器楽演奏もまさに手仕事。新しい年、ますます愛情と誠意を持って、人、作品、そして楽器に向き合っていきたいものです。

2009年01月07日

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