第380回 チーズを自作してみたら…の巻

巷では、物価の上昇が騒がれていますし、それは確実に私のお財布にも容赦なく襲い掛かってきています。でも、食べたいものは我慢したくない。できることなら、物価高を逆手にとって、無理やりにでも楽しんでしまえないものか。無理やりにでも…。

特に悲しいのは、大好きなフロマージュ(チーズ)の値上げです。牛乳の値段はほとんど変わっていないのに…。国産のチーズ以外は、値上がりしていない、というご意見もありますが、どうもそうではない気がしてなりません。そこで、思いつきました。「(高くなってしまって)買えぬなら、作ってしまえ、ホトトギス…もとい、フロマージュ」

今までもカッテージチーズを作ったことはありましたが、牛乳の量に対してほんの少ししか“収穫”がないので、なんとなくもったいないような気がしていました。でも、考えてみたら、特売の牛乳を使えば同量のフレッシュチーズを買うよりは安くできるのだし、なんと言っても美味しくてフレッシュ、しかも安全なものが食べられるのだったら、価値は充分にありそうです。

おや、ちょうど、冷蔵庫に広島産のノーワックスのレモンがころがっているではありませんか。…と、早速リコッタチーズを作ってみることにしました。作り方は意外に簡単。1リットルの牛乳に対して、レモン汁40~50ml(好みによって少し加減して)、塩少々(味のためではなく、牛乳の臭みをとるためのものなので、少量でOK)を加え、火にかけて木べらで静にかき混ぜます。ふわふわと分離してきたら弱火にして一呼吸おき、頃合いをみて火を止め、ガーゼかペーパータオルで自然に漉せばいいのです(搾らないで)。ポイントは火加減、そして火を止めるタイミング。煮立たせないように60~70℃くらいをキープすることと、完全に分離したのを見極めて(かといって、時間を長くとりすぎないようにも注意して)火からおろす、ということでしょうか。

リコッタチーズはイタリアではとても料理やデザートによく使われる、ポピュラーなフレッシュチーズ。カッテージチーズよりもたくさんの分量がとれますし、冷蔵庫で3~4日は軽くもちます。とはいっても、そのままメープルシロップやブルーベリーや柑橘系などのフルーツソースをかけて食べてもいいし、クリームチーズのようにチーズケーキに入れても軽い仕上がりになりますし、スコーンやマフィンに入れてもよし。もちろん、お料理にも色々使えるので、あっという間に消費してしまうのですが…。

そうそう、漉した時にでる分離した液体の方は、栄養がたっぷり含まれたホエーのようなものですから、捨てずに使います。あまり酸っぱくはありませんから、スープに入れてもととても美味しくいただけますし、そのまま冷やしてハチミツやバナナとミキサーにかけ、ジュースにして飲んでしまってもいいくらい。美容(お肌?)にもいいような気がします。

その日は、出来たての自家製リコッタチーズに卵白、玉ねぎのみじん切りとつなぎの小麦粉、そしてフレッシュハーブ(イタリアンパセリ)のみじん切りを加えてお団子を作り、湯に入れて、白玉のように浮いてきたら、一呼吸おいて(リコッタチーズの時同様、この、一呼吸、という部分って「感覚で料理してるな~」っていう感慨に浸れるので、個人的に好きなのです。)、掬い取ります。あとは好みの味にしたトマトソースをかけ、摩り下ろしたパルメジャーノをかけて、オーブンで焼いてできあがり。柔らかいけど崩れない、ぷるんとしたお団子の食感と、リコッタの優しい風味を楽しむために、あえてお肉や香りの強すぎるハーブは入れませんでした。

その翌日は、鶏の挽肉とみじん切りの玉ねぎ、ワイン、塩コショウで味をして餃子の皮に包み、水餃子にして、予め作っておいたレモンバターソースをかけて頂きました。これはペリメニというロシア風の水餃子料理で、シベリアの伝統料理をアレンジしてみたものです(ロシアではカッテージチーズを使います)。本当はかなりヘビーなバターソースを合わせるのですが、この水餃子の中のあんはとてもさっぱりとしていますから、確かにバターベースのソースが相性抜群なのです。でも、ここで忘れてはいけないのはレモンの酸をある程度出すこと。酸がきちんとあると、しつこくならないし、飽きないでたっぷりいただけるのです。ちなみに、私は先ほどの話に出てきたホエーを加えて、軽めのベシャメルのようなソースをレモン風味にしてみました(こうするとバターもかなり減らせます)。

甘みと酸味、あたり(塩)のバランス、とか、バターベースやクリーム系のソースを軽く仕上げることは、私がかねてから秘かに料理のテーマにしていることです。ホワイトソースを作るとき、牛乳の代わりに豆乳を使ってみるのも面白いものです(大豆の豆臭さは、ゴマとあわせるとうまくいなくなるので、豆乳のクリームを作るときには練りゴマを少し加えるのがオススメです)。

そうそう、バターといえば、値上げもさることながら、バターがなかなか手に入らなくなってしまったのは残念な(困った!)ことです。なにせ、私の冷蔵庫にはここ数年、マーガリン(もしくはファットスプレッド)というものが、入ったことがないのです。油なら液体、もしくはバターと、決めているのであります。ああ、一日も早くスーパーに行けばいつでも普通に(個数制限などなく…)バターが手に入るようになってほしいと願う、今日この頃…。

ところで、美味しいものを頂く時に欠かせない“お供”は、お酒です。よく「器は料理を美味しく見せる」と言いますが、よいマッチングのお酒は料理を実際に(確実に!)美味しくすると、硬く信じています。…と、いうわけで、この二日ともお酒がすすんでしまいました。

むむ?家計を省みてみると、チーズ代は少し浮いたけどその分お酒代がかかってしまっているような…。まぁ、たくさん楽しめたから、よかったことにしましょう!

2008年05月09日

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