第348回 そんなに強そうですか

「美奈子ちゃんって、本当に強い。昔からどんなに飲んでも顔色一つ変えなかったもんね…」「美奈子先生は、詳しいだけでなくてお強いですよね~」う~ん、確かにそう“見えて”いるのは事実だと思われるのですが、ちょっと待ってください。これにはいろいろワケが…。

まず声を大にして言いたいのは“顔色が変わらない=強い”とは限らない、ということ。確かに私、お酒は大好きです。大好きですとも。でもね、好きこそものの…とは申しますものの、だからと言って必ず大成するとは限らないのです。(“下手の横好き”、という言葉もあるでしょう?)顔に出る出ないは体質的なことによる部分がほとんどで、私はたまたま血行が悪いために赤くならないというだけです(実際、私の知っているある人はコップ半分のビールでも赤くなりますが、その後ボトルを何本も空けることが出来ます)。

それが証拠にほら、触ってみてください、手足。冷たいでしょう?冷え性なんです。あ、触っていただくのに差し障りがあるのでしたら、この目の下にある由緒正しいクマを、しっかとご覧になってください。皮膚がしっかりと、シックな茶色に色づいているのが見て取れるでしょう?自慢じゃないけど、高校時代からの筋金入りの20年モノですもの、そんじょそこらの急性クマとは色も育ちも違います。

お分かりいただけますでしょうか?私が赤くならないのは、お酒が“効かない”ほど強いからではなく、単に血行が悪いだけなのです。夏でも手足の末端が冷えて眠れなかったり、滝のような汗をかけると評判のゲルマニウム温浴なるものを試してみたり、窓のないスタジオで一時間フラメンコを踊っても、ほとんど汗をかかずに“涼しい”顔をしていたりするのも、そのためです。あ、血行の話でつい、頭に血が上ってしまいました(そうか、頭にばかり血が行きやすいたちなんですね)。失礼致しました。

であるから皆様、赤くならないから底なしにお酒が呑める、なんて、そんな殺生なことはどうぞおっしゃらないで下さい。え?手足を触ったこともないし、ノーメイク時の目の下を見たこともない、とおっしゃる?…では、お酒を頂いた時の私の話しを、よく聞いてみてください。ロレツが微妙に怪しくなっているでしょう?歩く速度だって、ちゃんと遅くなるのです(いつもが早足過ぎる、という意見もありますが…)。

つまり、ごくごく人並みに善良な、標準的アルコール強度の持ち主なのです。それが何故でしょうか、すごく豪傑なイメージがあるようで、初対面の方から「いやぁ、よく飲んでよく召し上がる方と伺っていたので、どんなに“ビッグ”な方かと思ったら、意外に小柄でいらっしゃるんですね」なんて言っていただくことも少なくありません。確かに、美味しいものに人一倍興味があるのは確かですが、だからって人様のお猪口に手を出したりなんてしませんし(当たり前ですね)、実は他の方よりも量は頂いていないのです。なのに、何がいけないのでしょう?

ここで、自分の行動をちょっと思い出してみると…。ちょっとしたクセがあることに気づきました。仕事先で地元のお酒を頂いたりすると、まず開口一番「あー、美味しい!幸せ~!」。そして、つい蔵元の名前を伺ってしまったり、瓶を見てその銘柄をメモってしまうのです。だって、せっかく素晴らしいお仕事をされている蔵元と出合ったんですもの、ちゃんと覚えておきたいではありませんか。よい演奏を聴いたときに、演奏家の名前を覚えておきたくなるのと同じです。ところが、お酒も入っているし、一度聞いただけではなかなか記憶できないので、手帳にメモったり写真に収めたりするのですが、どうもこの貪欲な姿勢がいけないような気がしてきました。

もう一つ。知人によると、お酒の話しになると止まらなくなる、というのです。でも、ちょっと待ってください。止まらなくなるのは、お酒の話しだけではないのです。それがお酒ではなくバッハの話であってもフィンランドの話しだとしても、はたまたメキシコ料理についてや憲法第9条についてだって同じことなのです。

つまり、私はいろんなお酒やお料理の“味”が好きで、ゆっくり“味わう”のが好きな本家本元、正真正銘の、由緒正しきお酒好き&食いしん坊なのであって、浴びるほど飲みたい、とか人様の何倍も飲んで食べないと気がすまない、なんていうアウトスタンディングな大酒のみや大食漢ではないのです。どうか皆様、私に海賊たちのように獰猛で豪傑なイメージを抱くのは、勘弁してやってください(こう見えても嫁入り前なので…)。

それにしても、食べ物でも飲み物でも、美味しいものを頂けるのはとってもとってもありがたいことです。例えば今の季節でしたら一日のしめくくりにキリッと冷やした辛口のスパークリングワインとちょっとしたおつまみがあれば、一日の疲れも何も遥か彼方に吹き飛んでしまうほど幸せになります。さて、今夜は何を頂こうかしら…。

2007年08月23日

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