第298回 慣れてもいいの?

24節気の処暑を過ぎましたが、暑いです。日本はいつからモンスーン気候じゃなくなって亜熱帯性気候になったの?と、誰にともなく聞きたくなってしまうほどです。…とはいえ、仙台に帰省するとこの暑さがウソのように涼しく快適なのですから、日本がいかに南北に大きな国であるか、ということになるのでしょうか。それにしても暑いです。

と、言いつつ、実は暑いのはちっともいやではありません。もともと低血圧ですが、それに加えて貧血症で代謝が悪く、普段なかなか汗がかけないのが悩みなので、暑さに汗することは心地よく感じます。たくさん汗をかいてお風呂に入って、また汗がふきでてきそうになるところを、冷たいアルコールを飲みながら静かに涼むのは、実にいいものです。ただ、苦手なのはこの不快な湿気!(ウチのピアノも悲鳴を上げています)。これだけは克服できません。

ついに克服できなかったものといえば、小学校時代の給食です。嗚呼、あの時間は暗かった…。大体、なんで“食パン二枚”なんでしょう?なんで“全部食べ終えるまで昼休みにならない”のでしょう?4時間目も終わりに近づくと、どこからともなく給食のカレーや揚げものの匂いが漂ってきて、それはそれはブルーになりました。牛乳すら苦痛でした。なかなか箸(当時はスプーンとかだったけど)が進まず、いつも食べ終わるのは最後の方でした。どうしてだったのでしょう?今はこんなに食い気に満ちて、好き嫌いもないのに、不思議なことです。

給食だけでなく、小さいときは「冷奴」とか「煮魚」とか「カキフライ」とか、食べるのにかなりの苦労を要するものが多かったのに、歳を重ねるごとにどんどん苦手なものは減りました。以前までは、これを好ましいことだと自信を持って認識していたのですが、もし色々な味にただ、慣れてしまっているだけなら、あまり素直に喜こべないような気が、最近はするのです。

そういえば、コンビニのおにぎりやスーパーの漬け物も、初めて食べた時には何か違和感を感じました。あまり神経質な方ではないですが、ソルビン酸など多量の合成保存料が入っていたのを、もしかしたら体(舌?)のどこかが認識していたのかもしれません。今はもうほとんど、何も感じないで受け入れてしまっている感がありますが…。もしもこの“慣れ”が“感覚の麻痺”によるものだとしたら、ちょっと注意が必要かも。…とは言っても、実際のところこんなに暑かったら、保存料なしで食品を扱うのは、確かに難しいことでしょう。う~ん、現代人としては辛いところです。

保存料とは違うけど、いつのまにか電子レンジの便利さからも離れられなくなっています。最近では「トウモロコシもレンジでチンしたほうが長時間茹でるより栄養が損なわれず、しかも所要時間はたったの3分!」とか、「和菓子もレンジで簡単に!」とか、電子レンジの裏ワザ的な使い方もよく目にします。ある歯科医師学会では、最近人の唾液とか歯垢の分子構造(?)に異変が見られて、本来偶数であるはずの分子(だったかな?)が奇数になっていることが珍しくないのだという発表があったそうです。原因はどうやら、電子レンジによってその組織を不自然に破壊された食品を多く摂っていることによるものだとか…。

それもこれも、“現代の現実”なのだから、あまり気にしすぎて神経質に目くじらをたてても仕方ないこととして、割り切ることも必要かもしれません。でも、もしも完全に無農薬・無添加でつくられた野菜やお料理の美味しさに出会い、そちらに“慣れ”てしまったら…?もう、後戻りできない体になってしまうかもしれません。

『習うより慣れろ』と言われますが、何に慣れるか、が大切なのかもしれない…。慣れる部分と慣れない部分の両方を、意識して持っていたいものです。そして、毎日触れている音楽や仕事に対しても、いつも励ましてくれる周りの人たちに対しても、“麻痺”することなく、いつも新鮮な気持ちを抱いていたい…と心から思います。

2006年08月25日

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